「……なんで俺までアンタの用事に付き合わなきゃならない?」

 ティー達より数刻早くヤシュナ村で船を降りたシグレは、ルクレティアに付き従っているシウスとレレイを見遣った。

「そこのおっさんと姉ちゃんだけで事足りるだろ?」
「そうです、ルクレティア様!」
「あの男の言う通り、我々だけでも十分であります!」

 シウスとレレイが、シグレに同調するが、言われている当人は「いい風が吹きますね、ここ」と全く聞いていない。羽扇をゆっくり仰ぎながら、のんびり歩く。
 呑気なものだ。シグレは溜め息を吐く。
 向かっているのは、ティーが向かっているビーバーロッジの北西にあるセラス湖だった。ヤシュナ村の近くにある高台から、回りこむようにその畔にある大きな岩へと向かっている。途中何度か魔物と出くわしたが、シグレの出番はなかった。敬愛するルクレティアを守るため、護衛する任に燃えるシウスとレレイが張り切ったお陰だ。この分だと、目的地に到着するまで同じ調子が続くだろう。

「――気にくわないですか?」

 魔物を倒し、休憩をとっている間、草原に片膝を立てて座りセラス湖を眺めていたシグレの横に、ルクレティアが立った。シグレを横目で見て「すいません」と謝る。

「本当は王子のところに行きたかったんですよね」
「んなこと露とも思ってねえくせに」

 はっ、とシグレは鼻で笑いルクレティアを見上げる。羽扇で隠れている横顔は表情が窺えない。

「食えない女だ」
「でも、今から会いに行く人は知り合いが多い方がやりやすいですから」

 遠くに見える目的地をルクレティアは見つめた。あそこには会うべき人間がいる。ロードレイクに水を取り戻す、切り札を持つ男が。

「貴方だって、早くロードレイクを助け王子の重荷を少しでも取り除きたいんでしょう?」
「………………」

 シグレはルクレティアから目を反らした。のっそり立ち上がり、軽く服に着いた汚れを払いながら、じっと見つめるルクレティアから遠ざかる。

「――シグレ君」
「わあってるよ」

 シグレは肩ごしに振り向いて言った。

「ちゃんと着いていってやるから安心しろ」

 片手を挙げてひらりと振り、そのままシグレはセラス湖の畔に沿って歩き出した。かってに一人で行こうとするシグレに、シウスが「単独行動は控えるであります!」と声高に注意するが、聞く耳持たず歩いていく。

「………わたしが心配しているのは別のことなんですけどね」

 ルクレティアはシグレの背中にそっと呟く。そして距離が離れないように、慌てて出発の準備をするシウス達を「もう少しゆっくりしてて構いませんよ」とやんわり押し止めた。
 でも、とレレイが不安そうな顔をする。

「大丈夫ですよ」

 ルクレティアははっきり言って、笑った。

「シグレ君は優しい子ですから。待っていてくれますよ。――ほら」

 羽扇でルクレティアが指し示すその先で、シグレが立ち止まり、大きな欠伸をしていた。




 トーマは、ティーを蔑んでいた頃のリムスレーアに似ている。
 数日行動を共にしたカイルは、そんなことを思った。あの少年はいつも憎しみの篭った目でティーを見ている。
 ロードレイクにどう水を戻すのか見届ける。そう言ってティーに着いてきたトーマは、馴れ合うことをせず、厳しい態度を取り続けている。
 故郷に乾きを齎す原因の一つであるヘイドリッド城塞。忌わしい存在を作ったビーバー族の集落に行くと決まれば、トーマは締め上げてでも協力させればいいと息巻いた。それではゴドウィンと同じだと諭されても、周りの人間は信じられないと言わんばかりに敵意を剥き出しにする。
 ティーに大しては特に酷かった。バロウズ家やゴドウィンのせいでロードレイクは今も苦しむ羽目に落ちいっている。だが、雨も満足に降らず、日照る不毛の大地に直接変えたのは、太陽の紋章を宿した女王アルシュタートだ。その子供であり、面影を濃く残したティーに、やりきれない思いが生まれるんだろう。
 ただ、カイルはリムスレーアの時よりも、トーマの方がもっと深刻そうに思えた。ティーを睨む目が、それを物語っている。
 憎しみ。恨み。怒り。真っ黒な負の感情を混ぜて歪になった気持ちを、ティーに向かって投げ付けているようだ。まだ十の子供がするような目じゃない。
 ロードレイクの惨状にティーが心を痛めていることを、カイルはよく知っている。あそこはティーにとってもう一つの故郷だ。ロードレイクが、ロヴェレ卿がいなければ、ティーは産まれてすらいない。だが事情を知らないトーマはそんなことを知らず、王家を、ティーを恨み続ける。
 ロードレイクに水が戻れば、良い方向に向かうんだろうか。水をせき止める城塞が無くなって、押し流れる水がトーマとティーの間にある柵をぶち壊してしまったら。
 カイルは二年前の制裁から、一度もロードレイクに足を踏み入れていない。ティーなりに荒れ果てたロードレイクを見せたくない配慮もあったんだろう。だからカイルは今のロードレイクがどれだけ酷いのか、想像するしかない。
 トーマの瞳は怒りに燃えている。土埃だらけの服に、袖から見えた手は痩せ細っていた。とても苦しい思いをしてきたのは想像に難くない。
 ――それでも、カイルはトーマに見せてやりたかった。制裁を受けた時、空に昇る太陽の紋章の光を見て、崩れ落ちたティーの背を。
 久しぶりにロードレイクを訪れた時の、嬉しそうにロヴェレ卿に抱きついた、あの笑顔を。



「にしても」

 カイルは溜め息混じりに剣を抜いた。

「どうしてこんなに魔物が出ちゃうんでしょうねー」
「そんなことを言う暇があったら、とっとと倒してきなっ!」

 サイアリーズに発破を掛けられ、はいはーい、とカイルは地を蹴り、現れた甲虫の群れへと切り掛かった。羽音をうるさく鳴らすその胴体を、一撃の元に斬り伏せる。一匹一匹は弱いものだが、こう多いと流石に鬱陶しい。

「こっちは早いところ、セラス湖に行かなきゃならないのにさー」
「全くです!」

 リオンがカイルの手助けをしながら、大きく頷いた。

「早く行って、ロードレイクを救うことが王子の願いなんです。それを邪魔するのはたとえ誰であろうと許しません!」
「頼もしいお言葉」

 カイルはにやりと笑う。やる気を出している少女に、負けたくない。

「じゃあ、さっさと倒しちゃいましょうかっ!」
「――はいっ!!」

 二人は互いを鼓舞させながら、次々と魔物を斬っていった。その後ろでサイアリーズが、いつでも補助出来るように日輪圏を構え、ティーは目を閉じ、左手に意識を集中させる。
 赤く燃えるような光が、握りしめた手から生まれた。だんだんと強さを増し、瞼の裏からも強く光り差す。ちりちりと痺れるような熱を感じた時、目を開き、左手をカイルの後ろを狙っていた魔物に向けた。
 迸る炎が矢のように走り、魔物は一瞬として灰と化す。カイルは肩ごしにティーを見て「ありがとうございまーす!」と手を振った。
 だが冷たくそっぽを向くティーに、カイルは口元の笑みを引き攣らせ、再び甲虫の群れへと突っ込んでいった。何処かやけっぱちみたいな姿に、サイアリーズはやれやれと肩を竦める。

「ティー、あんたまだ怒ってるみたいだね。カイルにそれ貶されたの」
「ちっ、違います……。別に僕はそんな」
「はいはい。でも、しっかり闘っておくれよ。流石にこう連戦が続けば、みんな疲れてくるからね。ここで足止めを食っている訳にもいかない」
「そうだぞっ」

 サイアリーズの後ろに立っていたトーマが、ティーを睨み頬を膨らませた。

「ロードレイクを救う方法がようやく見つかったんだ。ぐずぐずしている暇なんてないんだぞっ!」
「トーマ、落ち着いてくれよ」

 トーマの横で宥めるように、柄の長いハンマーを持ったビーバーが言った。「……マルーン」とトーマはビーバーの名前を言い、目を鋭くさせる。

「何でだよっ。こうしている間にも苦しんでいるんだぜ、ロードレイクはっ!」
「そうだけど、まずは魔物を倒さないと先には進めないんだよ」
「………っ」

 トーマは不快感を露にして、マルーンを睨み付けた。ようやく見つけた解決の糸口。早く捕えて、現実のものにしたいんだろう。だが、うまく進まない道程に、気が焦っている。
 マルーンは、悲しそうな目をゴーグルから覗かせるが、何も言わない。自分たちビーバー族がロードレイクにしたことを思うと、どうしても言葉が引っ込んでしまう。
 ビーバー族はゴドウィンに脅されて、ヘイドリッド城塞を造った。逆らえば、ビーバー族の存亡に関わる。断る選択肢なんて、元からない。
 城塞が出来上がり、ビーバーは人間を避けるように暮らしてきた。だがある日ティーたちが里を訪れたことで状況が変化する。あの忌わしいヘイドリッド城塞を打ち壊す為にやってきたティー。故郷を助けたい一心で遠くロードレイクからやってきた少年。二人の存在に、ビーバー族の長老フワラフワルは、ハイティエンラン軍への協力を約束した。
 マルーンはティーたちの手助けをする為に、一行に加わっている。明るく気安いマルーンは、周りに早く馴染んだが、ただ一人トーマとはどことなくぎこちない雰囲気から抜けだせなかった。お互い、ロードレイクのことが気に掛かっているんだろう。

「――ティー様ッ、サイアリーズ様ッ!」

 カイルが叫ぶ。同時に大きな影が、地面に映りこむ。甲虫とは比べ物にならない大きな羽音が、鼓膜を震わせた。

「……おっきい……」

 空を見上げたマルーンが呆然と呟く。
 そこには、獲物を前に猛然と羽ばたくマッドコンドルの姿。宙を飛びながら甲高く鳴き、鋭利な爪を太陽の光に反射させ威嚇する。

「全く……、早いところ休みたいんだけどねえ」

 サイアリーズは前髪を掻き上げながら呟いた。
 カイルとリオンはまだ甲虫から手を離せない。ならばこっちがやるしかないだろう。

「ティー」
「――はい」

 ティーは頷き、一つに連結した三節棍を構えた。
 サイアリーズは右手を身体へと引き寄せる。甲に宿した風の紋章を発動させ、マッドコンドルの周りに強い突風をぶつけた。煽られ、均衡を崩す隙を逃さずサイアリーズは日輪圏を投げ付けた。弧を描き、日輪圏の刃が鳥の身体に一閃の傷をつける。「やあっ!」と続けてティーが打撃を喰らわせるが、やはりこれだけではマッドコンドルを倒すまで至らない。
 ちっと舌打ちをして、サイアリーズは戻ってきた日輪圏を受け止めた。攻撃を仕掛けられ、怒ったマッドコンドルの鳴き声を聞きながら、頬を伝う汗を忌々しく拭った。

「大丈夫ですか叔母上」
「参ったね。力が出ない」

 戻ってきたティーに、サイアリーズは息を切らせて言った。ヤシュナ村からビーバーロッジ、そして二度目の山道に体力がついていかない。ちゃんとした休息が取れれば大丈夫だっただろうが、人間を避けているビーバーロッジでは、満足に休むことは出来なかった。
 人間に関わったら、同じことの繰り返し。ゴドウィンに脅された記憶が、ビーバーたちを怯えさせている。排他的な雰囲気に、ティーたちは用事を終わらせるとすぐビーバーロッジを出るしかなかった。
 野宿ばかりで疲れが取り切れないままの山道。カイルやリオンは兎も角、登山に慣れていないティーとサイアリーズにはきつい。
 だが、後ろにトーマたちがいる間は、決して倒れてはいけない。

「あんたたち、あたしたちから離れるんじゃないよ」
「あ、ああ……」
「…………」

 サイアリーズの言葉に、マルーンがハンマーを両手で握りしめる。その横で、トーマは総てを恨むような目でマッドコンドルを睨んでいた。
 こいつを倒さないと、先には進めない。だけど、こいつらは倒すのに手間取っている。
 早くセラス湖に行きたい。
 道を阻む魔物に、トーマは苛立ちが沸いた。
 王族の人間は目に見えて疲れている。
 それを守る女王騎士たちは、まだ甲虫たちに手間取っていた。
 トーマは乾きに喘ぐ故郷の民を思い出す。こうしてまごついている間にも、誰かが死んでしまうかも知れない。自分よりも小さな子供が水を欲しがり、泣いているだろう。耳を劈くようなそれを思い出し、焦燥する。
 ――もう見ていられない。

「――トーマっ!?」

 いきなり地面に落ちていた石を拾うトーマに、マルーンが驚く。無謀にもマッドコンドルに向かって走り出すトーマに「戻ってくるんだっ!」と大声で呼んでも止まらない。
 空に羽ばたく鳥を見据え、トーマは渾身の力で石を投げ付けた。


「トーマッ!」

 マルーンの叫びに、サイアリーズが離れていくトーマに気付いた。危険に飛び込んでいく姿に「何やってんだい!」と叫ぶがトーマは聞かない。
 空に羽ばたくマッドコンドル目掛け「――このおっ」とトーマは渾身の力で石を投げ付けた。だが痩せ細った腕ではろくに力も出ず、すぐ石は勢いをなくす。
 石を投げ付けられ、マッドコンドルはトーマの敵意に威嚇して鳴いた。空高く舞い上がったかと思うと、トーマ目掛けて突進してくる。

「わっ!」

 トーマは素早く走った。さっきまで居たところを鋭い爪が掠り、地面が抉られる。掴まってしまえば、容易に身体は引き裂かれるだろう。
 逃げるトーマを、尚もマッドコンドルは追い掛けた。翼の羽ばたきが聞こえる度、トーマは肩ごしにその動きを見て、寸でのところで躱していく。
 少しずつ、呼吸が苦しくなってきた。喉が痛んで、ぜいぜいと鳴る。
 走れば喉が乾く。水が欲しいと身体が訴える。だからずっと走るなんて無茶、最近はしていなかった。それでも、マッドコンドルの猛攻を躱そうと、トーマは懸命に駆ける。
 突然、身体が前につんのめり、宙に浮く。足がもつれ、均衡を崩したトーマは、地面に転がった。被っていた帽子が頭から外れ、転がる。擦った膝頭が、熱く痛んだ。
 呻きながら手を突き起き上がる。
 大きな影がトーマを覆い、すぐ上で鳥の鳴く声が聞こえる。

「――とりゃあっ!」

 トーマに向かって掴み掛かりかけたマッドコンドルに、マルーンが飛び上がってハンマーを振り下ろした。小気味のいい音を立て、それはマッドコンドルの頭にめり込む。いきなり打撃を喰らい、がくん、と頭を落としたマッドコンドルは痛みに喚き、無茶苦茶に羽をばたつかせる。
 宙に跳んだままで身動きの取れないマルーンは、真横から来た翼の一閃に当り、跳ね飛ばされる。

「な……何やってんだよ!!」

 弱いくせに。何故他人を庇うんだ。疑問を抱えながらトーマが怒鳴った。転んだ痛みも忘れて立ち上がり、マルーンの元へ駆け寄る。攻撃を仕掛けられたことで、マッドコンドルもまたマルーンに標的を変えて、飛びかかる。爪が、力のない二人を狙っていた。

「――危ないっ!」

 トーマがマルーンの元へ辿り着くと同時に、ティーが二人の前に立った。三節棍で飛んできた爪を受け止める。力に押され、地面に足を引きずられながら後ずさる。それをティーは耐え抜き、マッドコンドルを押し返した。そして襲いくる猛攻を何とか凌ぎ、僅かな間を狙って足に手痛い一撃を喰らわせる。強く打ち据えたせいで、痺れる手を握り直し三節棍を持ち直す。左手の甲を翳した。
 緋色の光が虚空に生まれる。火の紋章が浮かび上がり、力が解放された。次々と紋章から火の矢が飛び出て、マッドコンドルを焼き貫く。瞬く間に燃え広がり、マッドコンドルは断末魔の叫びを残して落ち、息絶えた。
 息を大きく乱し、ティーは三節棍を地面に突く。疲れの溜った身体は鉛のように重たい。支えることが出来ず、そのまま膝を突き、座り込んだ。

「ティー様っ!」
「王子っ!」

 一人で無茶をしたティーに、急いで甲虫の群れを殲滅したカイルとリオンが、刃を収め駆けつけた。

「大丈夫かい?」

 先にティーの元へ辿り着いていたサイアリーズがしゃがみ、労りながら甥の背を優しく擦る。多少楽になった呼吸に、はあ、と大きく息を吐きティーは「ありがとう」とサイアリーズに笑いかけ、硬直しているトーマとマルーンを振り向いた。

「怪我は、ない?」
「あっ、う、うんっ。オイラは平気。ありがとう王子さま、助けてくれて」

 素直に礼を言ったマルーンに対して、トーマは黙ったまま、ティーを睨み付けた。

「トーマ?」

 首を傾げ、トーマを見たティーはいきなり、あっ、と声を上げる。

「トーマ、血が出ているじゃないか」

 転んだ拍子で擦りむいた膝頭から出た血が、服に滲んでいた。さっきまで痛みは感じなかったが、指摘され赤い点々を見た途端にじくじくと疼き出す。
 顔を顰めるトーマに、「早く治療しよう。おくすりがあるからすぐ治るよ」とティーは優しく微笑んだ。そして小さな手の甲に擦り傷を見つけ「ああ、ここも」と手を伸ばす。

「…………」

 トーマは、ティーが荒れ果てたロードレイクへ視察に来た日のことを、思い出す。
 水を汲みに飢えたウルスのいる森へ入った自分を、聞き付けたティーたちが助けに来て救ってくれた。その時も地面に転がり震えていた自分に『大丈夫?』とティーは笑いかけ、手を伸ばした。
 きれいな手だった。
 指や掌に肉刺が出来ていて、そのうちのいくつかは潰れていたが、自分のそれよりは何倍もきれいだった。
 水が無くなってから、ずっと必死だった。少しでも綺麗な水を見つける為に歩き回り、僅かな水たまりを見つけては、かさかさの手で掬う。
 目に見えて水が見つからなくなると、今度は土を掘って、そこに眠る水を見つけようと励んだ。固い土は指先を傷つけ、爪を割る。水が出ないと分かっていても、それでも望みを捨てられず、掘り続けてきた。
 トーマは知らず指を擦りあわせる。ざらざらしていて、二年前の自分のそれとはかけ離れていた。

 どうして。
 ――どうしてなんだ?

 なぜ、オレたちがこんな辛い目にあわなければならない。なぜロードレイクから水を奪った王家の人間が、のうのうと暮らしているんだ。
 同じ空の下。こっちは今にも死にそうになっているのに――。
 そんな些細なこと、こいつは知らない。

「――余計なことするなっ!」

 トーマはティーの手を払い、拒絶した。



07/02/15
07/02/18 文章追加