この想いは恋じゃない。恋であるはずがない。恋であってはならない。
だって、僕の両手は、何も持てないように出来ているのだから。


Once day once more 幻水5
過去捏造連載サイト再録本 P124 オフ 220g 700円
夏コミでの新刊です。サイトで連載していたワンスデーワンスモアの再録集。
ページ数の関係で一部抜けている話がありますが、代わりに書き下ろしを4本入れています。
表紙を篁めぐるさんに描いてもらいました。ありがとうございます!


話の一部
書き下ろし小話から
 ふと意識が浮上して、ティーは寝てしまったんだと思い出した。シグレを待っている途中、疲れが眠気を引き寄せてしまって、耐えきれなくなってしまった。
 まだ頭をぼんやり引きずる眠気を振り払い、ティーは重い瞼を開ける。
 目に映る、空の色。何時の間にか横になって眠ったらしく、固い石の地面の感触が指先に触れた。節々が痛むのは、固い所で寝たせいだろう。
 んん、とうめきを漏らし、ティーはとある事に気付く。
 頭の下に何かがある。疑問符が頭の中を飛び、不思議に思って左に寝返りをうつと、そこにはシグレが履いている草履と、彼の脚が見える。
 ざっ、とティーの身体から血の気が引いた。もしかしてもしかしなくても。
「……やっと起きたかよ」
「………っ!」
 気怠る気な声は頭上から聞こえた。青ざめたままティーが仰向けの上体に戻ると、覗き込むようにシグレが僅かに上体を落として、顔を近付ける。
「人を呼び出しておいて寝てるとは、大した度胸じゃねえか」
「シッ、シグレ……!」