――何も、知らないくせに。
Re:lacrima2 / Your death face:a P108 オフ 700円 幻水5 カイル→←王子+シグレ サイトで連載している長編加筆修正再録2巻目 表紙絵を篁めぐるさんに書いていただきました! 話の一部 書き下ろし部分から一部抜粋 ロードレイクに、水が戻った。 川を塞き止めていた城塞は、セラス湖からの膨大な水に押し流され、原形を留めていない。 遮るものがなくなった水は途切れることなく、かつて緑の至宝と謳われた街へ、川となって流れていく。 太陽の紋章による制裁から二年。その日、ロードレイクは歓喜に満ちた。 「………」 ティーは一人ロヴェレ卿の屋敷を見つめていた。一族は反乱を起こした罪で処罰され、もう住む人間はおらず、荒れ朽ち果てている。 動かずにただ見つめているティーを見つけ、久し振りのロードレイクを歩いていたカイルは足を止めた。 「……ティー様?」 砂利を踏む音を聞き、ティーがカイルに気付いた。 「カイル」 「どうしたんですかー? こんなところに一人で」 言いながらカイルはティーの元まで歩き、その隣りに立った。彼に倣って屋敷を見上げる。 ロヴェレ卿は貴族の中でも、特別女王家に対して忠誠心を持っていた。そして王位継承権がないティーにも分け隔てなく接し、惜しみない愛情を与えた一人でもある。 惜しい人を亡くした、とカイルは思った。生きていたら、ロードレイクを救ったティーを見て、誇らしく感じただろうに。 だがもう、どこにもいない。 カイルが初めてロードレイクを訪れた時、小さなティーをロヴェレ卿は抱き締めて迎えた。まるで、フェリドにも劣らない父親の顔をしていたその笑顔が浮かんで消え、寂しさを感じる。 「中には入られないんです?」 視線を戻し、カイルはティーに尋ねた。ティーは屋敷へ掛けられた橋の一歩前で、足を止めている。 「……ううん」 ティーは首を緩く振る。 「まだ行けないな……」
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