「どうしてアンタはオレと王子さんを見分けられるんだ? あのオバさんだって騙されるのに」
「オバさんって……、サイアリーズ様のこと? それ本人に言ったら恐ろしいことになるよ」
剣の手入れしているカイルの横で、何気なく様子を見ていたロイが震え上がった。
「怖いこと言うなよ。思い出しちまっただろ」
「もう言っちゃったのね……。あーあー」
「仕方ねえだろ。つい出ちまうんだから」
「素直なのか、それとも馬鹿なのか。たまに判断に困るよね、ロイ君って」
「何だよそれ」
「褒めてるんだよ」
カイルは刃に布を当て、走らせる。曇り一つない刀身に満足して重さを確かめるように振ってから、鞘に収める。慣れている手付きに感心しつつ、ロイは口を尖らせた。
「んなことはどうでもいいっ。オレの質問に答えろっ」
「んー――……」
カイルはまじまじとロイの顔を見た。あまりにも近いせいで、思わずロイは身を引く。
「なっ、なにすんだっ!」
「別にちゅーする訳でもなし。いいじゃない。ま、キスするんならティー様にしかしないけどー」
「…………」
「ああ、うん。やっぱりね」
ロイから離れ、カイルは頷く。
「遠目からやぱっと見だと分からないけど、目の色が違うんだ」
「色?」
「ロイ君はセーブルの大地の色。ティー様はファレナの空の色。どっちも綺麗だけど、オレはティー様のが好き」
「……で、他には?」
カイルは自分を指差した。
「オレを見る時の、表情。ティー様とロイ君じゃ全然違いまーっす。見る時の目の温度が全然違うもん。ロイ君は冷たいけど、ティー様は熱いのなんのって」
素で笑い、惚けるカイルに、ロイはうんざりする。
「ああそうかよ。どこまでいっても惚気るつもりかお前は」
「うん」
「即答すんなっ!!」
ロイの怒鳴り声が、辺り一面に響いた。
拍手ありがとうございました!
当てられ役に最適だと思います、ロイは。
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