外に出る為、ティーはカイルに護衛を頼んだ。リオンはまだドルフに刺された傷が癒えてなかったし、ミアキスもまた、ルクレティアに別件で仕事を頼まれている。
呼ばれたカイルは久しぶりにティーの護衛が出来るとあって、とても嬉しそうな足取りでやってきた。逆にティーは少し恥ずかしくなる。そこまで自分の護衛をする事が光栄だと思ってくれるなんて。大切にされている事実に照れくさくなる。
久しぶりなのはティーも同じだった。緊張しながらティーは肩ごしにカイルを見て「じゃあ行こうか」と言った。カイルも「ええ、行きましょう」と頷く。
それだけの短いやり取りなのに何故だろう。すごくティーの胸はドキドキする。そして、僅かに速く脈打つ心臓に気付いた。
そう言えば、カイルが僕の後ろを歩くのも久しぶりだ、とティーは唐突に思い出す。いつもは前を行き、戦闘に入ればいつも自分の盾になってくれる。そしてティーは、金色の髪が揺れる髪や広い背中を、いつも見つめていた。
ならカイルは今、僕の背中を見つめているんだろうか。そう考え、途端に視線が気になってしまう。ちくちくと視線が刺さっているような気にまでなってしまい、自意識過剰な自分に呆れる。
「で、今日は交易でしたよね。何処から回るんです?」
いきなりカイルの声が心にぶち当り「ひゃっ!」とティーは大きく肩を跳ね上げ驚いた。まさか声を掛けてそこまで驚くとは思ってなかったカイルは、目を丸くする。
「……オレ、変な事言いました?」
「言ってないけど……」
心臓にとても悪い。声が後ろから聞こえる度に、こんなに驚いたら身が持たなくなってしまう。
ティーはカイルと向き合い「カイルが前を歩いてよ」とその手を引いて、無理矢理自分の前へと押し出した。首を捻りながらティーを見ると、彼は安心している様だった。何故自分が前に立つ事で、ティーはそんなに安心しているのか。
だけどカイルはティーに、その疑問を口に出さなかった。言ったところで答えを言うとは思えない。なら、言わない方がいいのだろう。ティーも安心している様だし。
「じゃあビッキーちゃんのところに行きましょうか」
「うん」
歩き出すカイルの後ろを、ティーはついていく。その広い背中を見つめ、安心しつつも高鳴る心臓をそっと押えた。
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